うつ状態になると、自分がすべて悪いと思いこんだり、自信を失って自分が嫌いになるなど、ネガティブな気持ちが高まってしまいます。
自己肯定感を高めるために、小さな達成感が得られる活動に取り組んでみましょう。些細なことでもいいので、必要とされている、役に立っていると実感できる瞬間を持ちましょう。
自分を許容してくれる人のそばや環境に身をおきましょう。過去の辛さを乗り越え、自分が必要とされていることを実感することで、自分を肯定的に捉えられるようになっていきます。
完璧主義や白黒思考は禁物です。少しのミスで自分を否定してしまいます。人は必ず失敗しますが、人生に負けはありません。他人の視点で物事を見て判断してしまうと、自分の本当の気持ちが分からなくなります。
「私は私、相手は相手」という適切な壁を持ちましょう。
他人の感情はあくまで他人事で、私には関係ない、今のままの自分でいいと思えるようになると自然と自信が満ちてきます。
落ち込みや不安など、辛い感情が強い時は、何とかしようとせず、そのまま感じて受け入れるのも一つです。抑うつ感をそのまま放っておくと、気分は山形の経過を取って、自然に薄れて消えていきます。感情にとらわれず、目の前のできることに手を出していきましょう。
ストレスは、感情によって支配される無意識の心が、意識に抑え込まれることで生まれます。自分の心の声(本音)に気づき、解放してあげることで、心と意識のバランスがとれて行きます。感情を浄化するには、理屈では割り切れない憎悪や、不当な扱いに対する怒り、喪失感や寂しさなど、カウンセリングを利用して全て吐き出すのも良いでしょう。
うつ状態になると、怒りの感情を覚えることが難しくなります。
怒りは、他者の不当な攻撃から自分の心を守るバリアです。うつ状態では、本来他者に向かうべき攻撃性・怒りのエネルギーが自分に向けられ、自己否定の悪循環ができてしまっています。
不当に人格否定されても、きちんと怒りを覚えることができれば、おかしいのは相手であって自分ではないと、自己の尊厳を守ることができます。
自分を責めてしまう位なら、責任はどこかへ転嫁してしまいましょう。弱気になったり、気持ちが落ち込んだら、何かに腹をたててみましょう。
気持ちが動揺してネガティブな感情で一杯の時は、マイナス思考のために現実的な判断ができていない場合もあります。そのような感情の背景にある考え方やイメージ(自動思考)に気づくことで、現実を冷静に判断して、現実的で柔軟な考え方に変えていくことができます。
認知行動療法について、以下のページで詳しく説明してありますので、参考にしてみて下さい。
認知行動療法について
気分を落ち着けるには瞑想も効果的です。5分間でも呼吸に意識を集中する時間を作ってみましょう。
YouTubeなどの動画(マインドフルネス瞑想)を利用するのもおすすめです。
ストレスを跳ね返すことができるのは、愉快で楽しい気分だけです。心の強さは、気分転換という心の柔軟性によってもたらすことができます。時間を持て余して、あれこれ考えているばかりだと、何が何だが分からなくなってしまいます。動けるときには、散歩などして体を動かしてみましょう。
感謝の気持ちも幸せの感情につながります。人の喜ぶ顔が見たい、私を大切に思ってくれる人たちがいる、人生において感謝することがたくさんある、自分は他者に親切にして、手助けをしているといった気持ちは、心を癒してくれます。
最後に、毎晩寝る前に、その日あった「3つの良いこと」を書き出してみましょう(思い返してみましょう)。1日の終わりに嫌なことで頭が一杯になり、今日も辛かったと感じてしまうときには、1日の良かったことを見直してみましょう。
「コーヒーが美味しかった」とか、「晴天で気持ちよかった」など、どんな些細なことでもよいのです。「今日あった良いこと3つ」でも、「夢や目標を3つ」でも、「強みを3つ」でも、「感謝を3つ」でも、数分間そのことに浸りましょう。毎回心をこめて取り組むことで、「今日も幸せな1日だった」と締めくくることができるようになっていきます。
体の緊張状態を元に戻すには、ストレスが強い環境から離れて心身を休ませることが重要です。
交感神経の過緊張やストレスホルモンのバランスなど、自律神経の乱れを治すために、最初はいくら寝ても大丈夫です。
深いノンレム睡眠は、ストレスホルモンのバランスを整える効果があります。
必要に応じて睡眠薬を用いて、睡眠前半にぐっすりと眠ることが大切です。朝は決まった時間に起きるようにしましょう。
日中に眠い時は、仮眠をとり、就寝を早めてみましょう。
うつ病はエネルギー不足の病気です。意欲が湧いてくるまでは、日中の活動量は控えめに心がけましょう。
うつ病の初期には休息が必要ですが、寝たきりの状態が慢性化すると、さらに動けない悪循環に入ってしまいます。
なるべく毎朝太陽の光を浴びて、1日のリズムをつけるようにしましょう。
太陽の光は、セロトニンのレベルを高めます。セロトニンが高まると、不安が収まり穏やかで落ち着いた気持ちになります。日光はビタミンDの産生にも役立ちます。
週に2〜3回、5〜30分の日光を浴びることでビタミンDの産生には十分だと言われています。
昼間にしっかりと光を浴びると、暗くなってきた時に睡眠ホルモン、メラトニンの分泌が高まって安眠効果も期待できます。
夜11時頃に寝て、朝7時に起きる習慣を目指しましょう。
寝る前に行うルーティン(入眠儀式)は、気持ちを落ち着けて眠りへの準備を促します。ストレッチ、入浴、着替え、アロマ、日記、読書、瞑想など、自分に合う方法を見つけましょう。スマホやパソコンの利用は避けましょう。
過度に集中したり、ブルーライトで覚醒してしまいます。例外的に安眠用の音楽や動画は助けになる場合もあります。
カフェイン飲料は睡眠の4時間前にはやめましょう。
日中の仮眠は、15時までに、深く眠らない姿勢で1時間以内にとどめましょう。
毎日の行動記録表を書いてみることもお勧めです。次のリンクからダウンロードして使ってみて下さい。
行動記録表をダウンロードSは睡眠(Sleep)、Mは食事(Meal)を意味しています。
行動に加えて、気分の変化を10点満点で書いてみましょう。
生活の中で、どのような時に気分が良くなるか見直して、活動性が上がる工夫を検討してみましょう。
一週間を通して生活リズムを整えていきましょう。週末に動きすぎると、月曜に体調をリセットすることが難しくなります。生活リズムに波ができないように気をつけて、一日の疲れはその日のうちに解消するように気をつけましょう。
上手に気分転換をしてみましょう。散歩をする、音楽を聴く、歌を歌う、雑誌を見る、ゲームをする、ドラマを観るなど何でも構いません。達成感が得られて、集中できる活動に取り組んでみましょう。
工作、パズル、英会話、映画鑑賞など、好きなことに一定時間集中して取り組むことがおすすめです。
まずは、やりたいか、やりたくないかで判断しましょう。活動量とエネルギーは、最大の半分位の力に抑えて、5割位の達成感と疲労感を目安に取り組んでみましょう。
自宅で過ごす時間が長くなると、体力が低下し、ますます動くことが億劫になってしまいます。本格的なスポーツでなくても、体を動かす習慣を身につけていきましょう。
散歩から始めて、早歩き(トレッドミル)、サイクリング(エアロバイク)、ジョギング、水泳などの有酸素運動ができると理想的です。まずは1日に30分程度の散歩(4,000歩)を目安に始めてみましょう。
週に3回、1回30分の有酸素運動によって、うつ状態が改善するという報告もあります。
また、うつから回復した後は、有酸素運動を続けることで、再発が抑えられるとも報告されています。
うつを治す上で、セロトニンを高める食生活に気をつけましょう。
セロトニンは、必須アミノ酸の一つであるトリプトファンから作られます。トリプトファンが豊富に含まれている食品は、豆腐・納豆などの大豆製品、チーズ・牛乳・ヨーグルトなどの乳製品、卵・バナナ・ゴマなどです。
トリプトファンは、トリプトファンヒドロキシラーゼという酵素の働きによって、5-HTP(5-ヒドロキシトリプトファン)という物質に変化します。ビタミンDは、この酵素が十分に作られるように調節します。
また、葉酸やビタミンB12からつくられるS-adenosyl-l-methionine(SAMe)もトリプトファンヒドロキシラーゼの働きに必要です。ビタミンDは、魚やレバー、卵、チーズ、キノコ類に多くふくまれています。
5-HTPは、芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素の働きによってセロトニンに変化します。この酵素の働きには、ビタミンB6が必須です。ビタミンB6を多く含む食材は、サンマやサバなどの青魚、マグロ、サケ、レバー、卵、牛乳などです。セロトニンからは、2つの酵素の働きによってメラトニンが合成されます。メラトニンは睡眠ホルモンとも言われており、自然な眠りを誘う作用があります。
まとめると、トリプトファン、ビタミンB、ビタミンDなどを含む、魚や豆類、卵、乳製品などを定期的に摂取することが大切です。
魚をよく食べる国ほど、うつ病にかかる人が少ないという報告があります。魚には神経細胞を作る不飽和脂肪酸が多く含まれるためかもしれません。特にDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といったオメガ3脂肪酸を摂取することが大切です。オメガ3脂肪酸は、青魚に多く含まれており、サバ、ブリ、サンマ、ニシン、サケ、マグロなどが良いでしょう。
血糖値が下がると、空腹感や脱力感に加えて、脳が働きにくくなり、イライラしたり、不安感が高まったりします。血糖値を急激に上げる食べ物は、大量のインスリンの分泌を引き起こし、約2時間後に低血糖状態を引き起こします。そのような高GI食品は避けたほうが良いでしょう(GIとはグリセミック・インデックスの略で、食後の血糖値の上昇スピードを計った数値です)。
具体的には、砂糖を多く含んだお菓子、清涼飲料水、すぐにエネルギーになりやすいご飯やパンなどです。逆に、血糖値がゆっくりと上がる食べ物(低GI食品)は、インスリンの分泌が穏やかになり、低血糖状態が起こりにくくなります。具体的には、豆類、食物繊維を多く含む野菜、乳製品などです。低GI食品を積極的に摂取するようにしてみましょう。
食生活だけでなく、サプリメントを用いるのも有効です。
セロトニンやメラトニンの合成を促すサプリメントとして、以下のような製品がすすめられます。
DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といったオメガ3脂肪酸は脳機能の改善効果があります。
ナイアシン・ナイアシンアミド(ビタミンB3)は、トリプトファンから作り出されて、補酵素としてエネルギー代謝に関与しています。神経系では、不安を抑えたり、眠りを促す効果があります。
ナイアシンを服用すると、30分〜1時間して皮膚がぴりぴりとかゆくなる、ナイアシンフラッシュが起こる場合があります。その場合、構造の一部がアミノ基に変わったナイアシンアミドを使うことで、副作用を抑えることができます。
疲労感が強い時は、漢方薬を併用することも効果的です。
女性の方では、疲労感の原因として貧血がある可能性もあります。
血液検査で貧血の有無や、貯蔵鉄(フェリチン)のレベルについて調べてみましょう。必要に応じて、鉄剤(ヘム鉄)を服用してみて下さい。