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双極性障害の
治療方法

双極性障害の治療方法

目次

双極性障害の症状

双極性障害の2つのタイプ

双極性障害の発症年齢は平均的には20〜30代ですが、中学生から老年期まで幅広い年齢で発症します。

 

双極性障害には、I型とII型の2つのタイプがあります。

 

双極I型を発症する人は1%以下、双極II型を発症する人は1~2%と言われています。

うつ病が5〜10%であることに比べると低頻度です。

 

診断にあたっては、次のような基準が定められています。

 

I型:躁状態(躁病エピソード)の存在

II型:軽度の躁状態(軽躁病エピソード)と、うつ状態(うつ病エピソード)の存在

躁状態の時は、気分が高揚して爽快に感じられ、自分が偉くなったと感じたり、何でもできるような気持ちになります。

睡眠時間も短くなり、一日中、目標に向かって動き続けます。

話したい欲求も強まり、相手の迷惑も考えずにしゃべり続けてしまいます。

 

衝動的になって、必要ないものを買い込んだり、高額な買い物をしてしまいます。

頭の回転も早くなり、新しい考えが次々に浮かび、いろいろ手を出してしまいますが、一つのことに集中できず、落ち着きがなく、すぐに気が散ってしまいます。思い通りにならないと怒りやすくなり、職場で喧嘩をしてしまうこともあります。

 

双極I型の躁状態について

双極I型の躁状態は症状が激しく、入院が必要になったり、放っておくと職業や学業など社会生活に問題が起こるほどです。

口数が多くなり、家族が言うことを聞かないと怒り出します。

 

普通はそこまで言わないだろうということまで口にするため、周囲は辛い思いをします。

本人は絶対に自分が正しいと思っていて、責め立てられた家族は精神的に追い込まれ、疲れ切ってしまいます。

 

激しい言動のせいで仕事を失ったり、家族に見放されたり、多額の借金を背負うこともあります。

躁状態が悪化すると、未来が予知できるなど、現実離れした妄想や、神の声が聞こえるといった幻聴が出てくることもあります。

 

双極II型の躁状態について

一方、双極II型の躁状態は軽度であり、いつもより気分が高揚するものの、社会的に問題となることもありません。周りの人からみると、いつもと様子が違うものの、本人にとってはいつもより気分が良いと感じられる程度です。むしろ職場で活躍するなど、望ましいものと受け止められる場合もあります。

 

気分の変化が激しければ双極性障害であるとは限りません。

日によって気分が良かったり落ち込んだりするなど感情の起伏しかない場合や、学業や仕事が忙しい時に睡眠時間を削って頑張ったというような体験については、双極性障害ではない可能性もあります。

 

怒りっぽいだけでも躁状態とは言い切れません。対人関係が不安定なパーソナリティー障害の方が、対人関係で問題が起こった時に、激しく怒ったり、落ち込んだりした時に、軽躁状態やうつ状態と誤解される場合もあります。

 

双極性障害の躁状態は、気分の変化がしばらく続きます。

I型では1週間以上、II型では4日以上にわたって躁状態が続くことが診断基準となっています。

 

また、双極II型の診断にあたっては、うつ状態の存在が必要です。

双極I型の方も7割程度がうつ状態を経験すると言われています。

双極I型とII型で、うつ症状に変わりはありません。

うつ状態は、気分の落ち込みと、興味や喜びの喪失が主な症状です。

 

うつ状態の診断基準について

次の9項目のうち5つ以上を認め、(1)か(2)の症状が2週間以上続いている場合、うつ状態と診断されます。

(1)辛い憂うつ感が一日中つづきます。
(2)普段興味があったことに関心が持てず、何をしても楽しい感情が湧きません。

さらに体の症状として、

(3)睡眠障害、
(4)食欲の変化、
(5)疲労感、
(6)動きの低下(または気持ちの焦り)に加えて、

精神的な症状として、
(7)自責感、
(8)集中力低下、
(9)希死念慮が挙げられます。

 

何をするのも億劫で、すぐに疲れてしまい、それまでの人生には何の意味もなかったと考えてしまいます。

集中して考えることもできず、物事を決めることも難しくなります。夜はなかなか寝付けず、なんとか眠れても暗いうちから目が覚めて、過去のことを悔やんだり、嫌なことばかり頭に浮かびます。

動作も遅くなり、考えが進まない一方で、焦燥感から居ても立っても居られず、目的もなくうろうろと歩き回ります。

 

双極性障害ではない通常のうつ病では、環境の変化が心理的ストレス要因として発症に関与することがありますが、双極性障害のうつ状態は、はっきりとした理由もなく、毎日つづく気分の落ち込みとして始まる場合もあります。

うつ状態は数週間から数ヶ月続くこともあります。

 

双極性障害では、うつ状態と躁状態が入り混じった「混合状態」となる場合もあります。

これは、躁状態なのに抑うつ気分が混ざっている場合や、うつ状態になのに焦燥感が高まり、活動性が増加している状況などを指します。

混合状態では、行動性が高まっているため、希死念慮が強くなることに注意が必要です。

 

また、1年間に4回以上、うつ状態や躁状態を繰り返す場合、急速交代型(ラピッドサイクラー)と呼ばれます。

 

 

双極性障害とうつ病の区別

双極性障害とうつ病の区別が必要

双極性障害の発症がうつ状態から始まるか、躁状態から始まるかは、およそ半々です。

特に双極II型の方は、躁状態が問題となることはなく、辛いのはうつ状態ですので、そこで初めて受診される場合がほとんどです。

つまり、同じうつ状態で発症していても、うつ病のうつ状態か、双極性障害のうつ状態かを区別する必要があります。

 

うつ病か双極性障害かの区別が大切になるのは、うつ病と双極性障害で治療薬が異なるためです。

うつ病には抗うつ薬が用いられるのに対して、双極性障害では、抗うつ薬が効きにくく、気分安定薬や非定型抗精神病薬を使うことが一般的です。

 

もし、それまでに躁状態になったことが確認できれば、双極性障害と診断できます。

しかし、双極性障害の方でも、躁状態の経験がない、または自覚がない場合も多く、そのような場合は、うつ病という診断のもとに治療が進められることになります。

治療経過の中で躁状態が出てくれば、その時に初めて、双極性障害のうつ状態と分かります。

 

実際、双極性障害の方の4〜6割が、初診時にうつ病と診断されたと報告されています。

逆に、初診時にうつ状態と診断された方の2〜3割が双極性障害であったとの報告もあります。

 

双極性障害を早期に診断する上で、過活動の時期があったかどうか、また躁状態の診断基準を満たしていなくても、2日以上の短期間に症状が部分的に出現したことがないか確認することが有効です。

情動の不安定さや過眠・過食など、うつ病として非定型な特徴も双極性障害の可能性を示唆しています。

 

うつ病は、一度治ると再発のリスクは比較的少ないのに対して、双極性障害に伴ううつ状態は再発のリスクが高く、長期的な経過を取る場合もあります。

うつ病の治療では、うつ状態から回復することが治療の目標となりますが、双極性障害の場合は、うつ状態が良くなってからも再発の予防が大切です。

 

双極性障害の原因

遺伝的な要因

双極性障害の方では、家族にも双極性障害の方がいる場合が多いことや、一卵性双生児の一人が発症すると、約7割の確率でもう一人も発症することなどから、遺伝的な寄与が疑われています。

実際、両親の一人が双極性障害の場合、子供が発症する割合は5~10%、両親ともに双極性障害の場合は、5~7割とも言われています。

 

しかし、発症に直接関与する遺伝子は分かっておらず、関連する遺伝子異常が存在しても、リスクがたかだか2倍になる程度です。

一つ一つの遺伝子の影響は小さいものの、それらが集まると、発症しやすくなると考えられます。

 

一卵性双生児であっても発症しない場合があることは、環境要因も関与することを示しています。

ただ、幼少期の体験が発症に関与することを示す知見は得られていません。

心理的なストレスは、再発のきっかけにはなりますが、双極性障害そのものの原因になるとは考えられていません。

 

双極性障害を併発する遺伝病として、ダリエ病、ウォルフラム症候群、慢性進行性外眼筋麻痺などが知られています。

これらの疾患の原因遺伝子は、細胞の小胞体とミトコンドリアの機能に関係しています。小胞体とミトコンドリアは、細胞内のカルシウム(Ca2+)濃度を調節します。

 

カルシウム調節の異常によるもの

また、ゲノムワイド関連解析で双極性障害との関連が分かったCACNA1Cという遺伝子もカルシウム(Ca2+)のチャネル分子です。

実際、双極性障害の治療薬であるバルプロ酸は、カルシウムチャネルに作用しますし、双極性障害の別の治療薬であるリチウムは、ミトコンドリアに働きかけて、カルシウム負荷による障害を抑えます。

これらの知見は、細胞内カルシウム(Ca2+)濃度の異常が双極性障害の発症に関与することを示唆しています。

 

カルシウム濃度は細胞外で高く、神経細胞が活性化(脱分極)すると、細胞膜のカルシウムチャネルを通って細胞内に流入します。

 

流入したカルシウムは、細胞の遺伝子発現を調整します。細胞内のカルシウムは、カルシウムポンプの働きで、細胞外に汲み出されたり、細胞内の小胞体へ移動します。

 

小胞体のカルシウムは、ミトコンドリアへとユニポーターによって運ばれ、ミトコンドリアの代謝を変化させます。ミトコンドリアのカルシウム負荷が大きいと酸化ストレスが誘導され、細胞にダメージを引き起こします。

 

双極性障害の方では、カルシウムの調節に異常が生じて、神経活動が障害されると考えられます。

このような異常が、脳のどの領域で起こっているのかは良く分かっていません。

 

動物モデルを用いた研究では、視床室傍核という部位で異常が起こることが発症の原因ではないかと考えられています(Kato, Psychiatry Clin Neurosci 2019)。視床室傍核は、縫線核からセロトニンの分泌刺激を受けて、扁桃体や側坐核、前頭前皮質などへとシグナルを送り、情動を制御しています。

 

双極性障害の治療薬である気分安定薬は、カルシウムの異常を直接抑えることで症状を改善し、非定型抗精神病薬は、2次的に生じる神経伝達物質(ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン、セロトニン、ヒスタミン)の異常を整えると考えられています。

 

双極性障害の治療薬

双極性障害の治療薬の有効性について

双極性障害の治療に用いられる薬を一覧にまとめました。躁状態とうつ状態の急性期に対する治療の有効性、また再発予防の有効性を示しています。

 

※横にスクロールできます。

分類 主成分名 商品名 有効性
うつ 予防
気分安定薬 リチウム リーマス
バルプロ酸 デパケン ×
カルバマゼピン テグレトール ×
ラモトリギン ラミクタール ×
非定型抗精神病薬 オランザピン ジプレキサ
クエチアピン セロクエル
アリピプラゾール エビリファイ ×
リスペリドン リスパダール ×
ルラシドン ラツーダ -

双極性障害の躁状態の治療

双極I型の躁状態の急性期治療に有効な薬はたくさんあり、それらを用いると躁状態は1~2ヶ月の間に改善する場合がほとんどです。

ただ躁状態は、いつもより調子が良いと感じられることも多く、当人が治療の必要性を感じない場合もあるため、どれだけ治療に積極的に取り組めるかが重要です。

 

気分安定薬であるリチウムやバルプロ酸、カルバマゼピン、また、非定型抗精神病薬であるオランザピン、アリピプラゾール、クエチアピン、リスペリドンなどが用いられます。

 

躁状態の治療の第一選択はリチウムです。

 

ただし即効性という観点では、非定型抗精神病薬が優れています。

実際、治療効果が出るまでに、リチウムはオランザピンより10日ほど遅れるという報告もあります。

単剤でも有効ですが、急性期には、気分安定薬と非定型抗精神病薬を組み合わせることで、躁状態を早急に改善させる効果も示されています。

 

気分安定薬

リチウムについて

リチウムは天然に存在する無機質であり、多幸感や爽快気分を伴う典型的な躁病の方に良く効きます。

2〜3週間の治療で、4〜8割の方で症状が改善します。

 

副作用として、飲み初めの1週間位は手の震え、下痢・吐き気などが起こります。

徐々に改善していきますが、手の震えだけは続く場合があります。

 

リチウムは、血中濃度が0.4〜1mMの範囲で用いますが、1.5mMを超えると中毒症状として、ふらふらして歩けなくなったり、腎障害により尿を濃縮できず、尿量が増えて口が渇くことがあるため、定期的な血中濃度の測定が必要です。

また、長期間の治療によって甲状腺機能低下が起こることがあります。

 

バルプロ酸について

バルプロ酸は、てんかんの薬として用いられていましたが、気分安定効果をもつことが分かり、双極性障害にも使われるようになりました。

躁状態の再発や、不機嫌さが目立つ場合、また混合状態にも効果があり、5割以上の方で症状の改善が認められます。

 

リチウムと違って即効性があり、治療開始して1週間で効き目が現れる場合もあります。

使い始めに吐き気が生じることがありますが、徐放剤を就寝前に使うことで、副作用が軽減できます。

他に体重増加や脱毛が起こる場合があります。

 

カルバマゼピンについて

カルバマゼピンもてんかん薬として使われていて、躁状態への有効性が明らかになった薬です。

治療効果は1〜2週間後から認められ、約6割の方で症状が改善することが報告されています。

 

効果はリチウムと同程度か、やや弱いと考えられています。

副作用として、めまい、吐き気に加え、稀に重症の皮膚炎が起こる可能性があるため、発疹が出た場合は中止する必要があります。

 

非定型抗精神病薬

オランザピンについて

オランザピンは、非定型抗精神病薬の中でも良く使われている薬です。

効果も即効性があり、3〜4週間の治療で5〜6割の方で症状の改善が認められます。

 

リチウムやバルプロ酸と同程度の効果が認められます。

気分安定薬で効果がなかった方でも、オランザピンで効果が認められる場合があります。

副作用として、食欲増加とそれに伴う体重増加、血糖値上昇などを来すことがあり、糖尿病の方は使うことができません。

 

クエチアピンについて

クエチアピンも躁状態を抑える効果があり、即効性が期待できます。

3週間の治療で、リチウムと同程度の効果が示されています。

 

副作用として眠気やめまいが起こる場合があります。

オランザピンほどではありませんが、体重増加が起こる場合があり、糖尿病の方は使用できません。

 

アリピプラゾールについて

アリピプラゾールは、躁状態を抑える効果がありますが、うつ状態に対しては治療効果が示されていません。

効果の出現も早く、服薬して4日目には症状の改善が認められ、2週間で約4割の方で躁状態が改善します。

副作用として、座ったままでじっとしていられず、そわそわと動き回るアカシジア症状が起こることがあります。

 

リスペリドンについて

リスペリドンも躁状態を抑える効果があります。

治療効果は、服薬を開始して3日程で現れる場合もあります。

3週間の治療で、約7割の方で症状の改善が認められます。

 

副作用として、手足が震えたり、体がこわばるといった錐体外路症状に加え、高プロラクチン血症による乳汁分泌や生理不順が起こることがあります。

 

双極性障害のうつ状態の治療

うつ状態の急性期の治療で有効性が確認されているのが、非定型抗精神病薬であるクエチアピン、ルラシドン、オランザピン、また気分安定薬のリチウム、ラモトリギンです。

服薬を6~8週間続けることで、症状の改善が期待できます。

 

気分安定薬

リチウムについて

リチウムは効果出現までに時間がかかるため、急性期の治療には使いにくい面があります。

リチウムの血中濃度が0.8mEq/L以上で症状の改善が認められたものの、血中濃度が0.6mEq/Lと低い場合、効果が認められなかったとの報告もあり、血中濃度の適切なコントロールが必要です。

 

一方で、リチウムは認知機能を改善し、自殺率を下げるなど長期的な予後を改善することが分かっており、症状が重い方では再発予防の観点から早めに始めるのも有効です。

 

ラモトリギンについて

ラモトリギンの治療効果については、50mgの服用で約4割の方で症状が改善し、200mgの服用で約5割の方が改善したと報告されています。症状の改善は3〜4週間で認められる場合が多いようです。

 

十分な治療効果を得るためには、200〜300mgまで増量する必要があり、アレルギー反応を避けるために少しずつ増量する点が、急性期治療に用いる上で難しい点です。効果については、うつ症状が重い方で改善が認められるものの、症状が軽い方では効果が明確でなかったとの報告もあります。

 

ラモトリギンは、皮膚症状を中心としたアレルギー反応のリスクがあるものの、その他に大きな副作用もなく使用できることが長所です。

そして、再発予防効果も期待できます。

 

非定型抗精神病薬

オランザピンについて

オランザピンは単剤での有効性が日本で示されており、海外では、抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬:SSRI)との併用もスタンダードです。

症状の改善は2〜3週間で認められる場合が多いようです。

治療には5〜20mgが有効と言われています。

 

オランザピンは、長期投与によって糖尿病などの代謝異常を引き起こし、長期予後を悪化させる危険があります。

急性期の治療で症状が改善した場合、長期的な再発予防は別の薬に変更することをお勧めいたします。

 

クエチアピンについて

クエチアピンは、8週間の治療で約6割の方で症状の改善が認められたことが報告されています。

症状の改善には、300mg/日と高い用量が必要と言われていますが、十分に服薬できた場合、効果を1週目から感じられる場合もあります。

 

クエチアピンには眠気や眩暈の副作用があるため、用量の調節が必要となる場合もあります。

また、長期的には脂質代謝異常や体重増加を引き起こす場合があることにも注意が必要です。

 

ルラシドンについて

日本で最近治療の選択肢に加わったのが、非定型抗精神病薬のルラシドンです。

ルラシドン単剤、20-60mg/日で6週間の治療によりうつ症状が改善し、効果もクエチアピンと同程度であることが報告されています。

症状の改善は2週目から認められる場合もあります。

 

副作用は、吐き気や眠気に加えて、じっとして居られなくなるアカシジア症状が起こることがあります。

クエチアピンのような体重増加が少ないため長期的に安心して使用できます。

 

その他

ブレクスピプラゾールについて

ブレクスピプラゾール(商品名レキサルティ)は、小規模の臨床研究で、双極性障害のうつ状態に効果があるとの報告があります。

今後、大規模の臨床研究で効果が検証されることが期待されます。

 

抗うつ薬(SSRI)について

抗うつ薬(SSRI)に関しては、躁状態に変化する躁転のリスクが懸念されています。

SSRI単独による躁転率は2~3%程度であり、三環系抗うつ薬では10%程度との報告もあります。

 

ただし、気分安定薬と併用することで躁転を抑えると言われており、上述した薬で効果が得られない場合には、慎重にSSRIを追加する方法も海外では用いられています(Yatham et al. Bioplar Disorders 2018)。

 

なお三環系抗うつ薬については、長期間服用すると躁状態とうつ状態を繰り返す急速交代型になり、長期的な経過を悪化させる可能性があるため、避けた方が良いでしょう。

 

最後に、海外での標準的な治療アルゴリズムを示します(Wang et al., Bipolar Disorders 2020)。

双極性障害の再発予防

双極I型で、躁状態を一度経験した人が再発するリスクは95%以上と言われています。

 

1回目と2回目の躁状態の発症の間には5年位間隔があることが多いのですが、1回の発症で、人生に取り返しがつかないほど大きな影響を与えかねないことを考えると、1回でも躁状態の経験があれば、予防療法を開始することが望ましいと言えます。

 

躁状態とうつ状態いずれに対しても予防効果が期待できるのが、気分安定薬のリチウムとラモトリギン、非定型抗精神病薬のオランザピン、クエチアピン、ルラシドンです。非定型抗精神病薬のアリピプラゾールは、躁状態の予防に限り有効です。

 

リチウムは、有効濃度の範囲が狭く、副作用のリスクが高いものの、長期的な予後を改善します。

効果を十分に高め、副作用を避けるために、血中濃度の定期的な測定が必要です。

 

リチウムは、特に躁状態の再発を抑える作用が高いと考えられています。

オランザピンも単剤でリチウムと同程度の予防効果が示されていますが、体重増加や代謝異常により長期予後を悪化させるため、最近は使用を避ける場合が増えています。

 

ラモトリギン、クエチアピン、ルラシドンは、うつ状態の再発を抑える効果が高いと考えられています。

クエチアピンは、オランザピンほどでないものの、体重増加の可能性があるため経過観察が必要です。

 

双極I型では再発予防が必須であるのに対して、双極II型の方の予防的治療の必要性はケースバイケースです。

うつ状態を繰り返す場合には継続的な服薬が勧められます。

 

一方、症状が安定している場合は、服薬なしでも、起床や就寝・食事・仕事・他者との接触などの生活リズムを整えることで再発を予防できる場合があります。

 

再発を防ぐためには、初期徴候を知ることも大切です。自分の双極性障害の経過を知るために、ライフチャートを書いてみることも役立ちます。

これは、発症してから現在までのうつ状態、躁状態の経過、薬の内容、その頃の生活上の出来事などを図にまとめるものです。

そのことで、どんな時に再発しやすいのか、どの薬が有効だったかなど分かります。

早期に徴候をつかむことで悪化を防ぎ、必要に応じて受診することが大切です。

双極性障害と妊娠について

気分安定薬のリチウムとバルプロ酸は、妊娠の最初の3ヶ月に使用した場合、胎児の奇形を引き起こすことが示されています。

 

リチウム服用により心臓の奇形が増加し、バルプロ酸服用により、脳の奇形や自閉症のリスクが増加します。

これらを服用している場合は、原則として避妊することが必要です。

 

妊娠を希望する場合は、投薬内容を変更するか、一時的に中止する必要があります。

もし、これらを内服中に妊娠が発覚した場合は、減量・中止しなければなりません。

 

ラモトリギン、カルバマゼピン、非定型抗精神病薬(クエチアピン、アリピプラゾール)については、奇形など大きな問題は報告されていないものの、安全性が確立している状況でもありません。

 

できれば避けたほうが良いですが、断薬によって症状が悪化するなど、服薬によるメリットが大きい場合は続けることも可能です。

減量する場合は、離脱症状が赤ちゃんにも起こる可能性があるため、少量ずつ慎重に行う必要があります。

服薬によるリスクとベネフィットを十分に検討して、治療を決めていくことが望ましいでしょう。